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2025年公示地価、バブル後最大の伸び率! 上昇率が高いエリアは?

執筆者プロフィール

亀梨奈美

株式会社realwave代表取締役。大手不動産会社退社後、不動産ジャーナリストとして独立。
2020年には「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに、不動産を“伝える”ことに特化した株式会社realwaveを設立。
住宅専門全国紙の記者として活動しながら、不動産会社や銀行、出版社メディアへ多数寄稿。不動産ジャンル書籍の執筆協力なども行う。

国土交通省は3月18日、2025年1月1日時点の公示地価を発表しました。全国全用途平均は前年比2.7%上昇し、バブル崩壊後、最大の伸び率となりました。一方、コロナ禍以降、順調に地価が上昇してきたエリアの一部は上昇率が縮小しています。

全用途全国平均2.7%増! 都心部が牽引

全用途平均


2020年2021年2022年2023年2024年2025年
全国1.4▲ 0.50.61.62.32.7
三大都市圏2.1▲ 0.70.72.13.54.3

東京圏2.3▲ 0.50.82.44.05.2

大阪圏1.8▲ 0.70.21.22.43.3

名古屋圏1.9▲ 1.11.22.63.32.8
地方圏0.8▲ 0.30.51.21.31.3

地方四市7.42.95.88.57.75.8

その他0.1▲ 0.6▲ 0.10.40.70.8
(単位:%)

住宅地


2020年2021年2022年2023年2024年2025年
全国0.8▲ 0.40.51.42.02.1
三大都市圏1.1▲ 0.60.51.72.83.3

東京圏1.4▲ 0.50.62.13.44.2

大阪圏0.4▲ 0.50.10.71.52.1

名古屋圏1.1▲ 1.01.02.32.82.3
地方圏0.5▲ 0.30.51.21.21.0

地方四市5.92.75.88.67.04.9

その他0.0▲ 0.6▲ 0.10.40.60.6
(単位:%)

商業地


2020年2021年2022年2023年2024年2025年
全国3.1▲ 0.80.41.83.13.9
三大都市圏5.4▲ 1.30.72.95.27.1

東京圏5.2▲ 1.00.73.05.68.2

大阪圏6.9▲ 1.80.02.35.16.7

名古屋圏4.1▲ 1.71.73.44.33.8
地方圏1.5▲ 0.50.21.01.51.6

地方四市11.33.15.78.19.27.4

その他0.3▲ 0.9▲ 0.50.10.60.9
(単位:%)    ※地方四市:札幌市・仙台市・広島市・福岡市
(出典:国土交通省「令和7年地価公示の概要」

全用途平均、住宅地、商業地ともに全国平均は上昇し、上昇幅も拡大しています。一方、名古屋圏や地方四市は、いずれの用途も上昇幅が縮小しています。

コロナ禍以降、2024年まで、上記ほぼすべてのエリアが上昇幅を拡大してきましたが、2025年は東京圏や大阪圏など都心部が牽引している形です。

2025年公示地価、上昇率が高いエリアの特徴は?

2025年地価公示 変動率上位ランキング(全国)

住宅地

順位標準地番号都道府県標準値の所在地令和7年公示価格 円/㎡変動率%
1富良野-4北海道富良野市北の峰町4777番33 『北の峰町25-11』65,00031.3 (27.9)
2白馬-1 長野県北安曇郡白馬村大字北城字堰別レ 827番3620,60029.6 (19.5)
3宮古島-6沖縄県宮古島市上野宇野原東方原1104番13,30023.1 (21.2)
4千歳-19北海道千歳市栄町2丁目25番2094,00022.9 (23.4)
5合志-6 熊本県合志市御代志字小池817番4035,30021.7 (16.0)
6野沢温泉-1 長野県下高井郡野沢温泉村大字豊郷字蟹沢 7886番1027,80020.9 (15.0)
7石垣-3 沖縄県石垣市字平得西原129番368,80020.3 (11.9)
8石垣-2沖縄県石垣市字新川喜田盛14番169,90019.3 (12.5)
9福岡東-42 福岡県福岡市東区箱崎6丁目4096番3 『箱崎6-11-1』365,00019.3 (15.0)
10目黒-8 東京都目黒区青葉台4丁目580番7 『青葉台4-6-19』2,080,00018.9  (8.0)
(注)『』書きは住居表示
   上段の変動率は2025年地価公示、下段は2024年地価公示。

商業地

順位標準地番号都道府県標準値の所在地令和7年公示価格 円/㎡変動率%
1千歳5-4 北海道千歳市幸町3丁目19番2 (ホワイトビル)128,00048.8 (30.3)
2千歳5-3北海道千歳市千代田町5丁目1番8 (東宙ビル)170,00042.9 (29.3)
3千歳5-2北海道千歳市錦町2丁目10番3 (ビジネスホーリン)104,00036.8 (28.8)
4白馬5-1長野県北安曇郡白馬村大字北城字山越4093番2 (こいや)29,80033.0 (30.2)
5渋谷5-13東京都渋谷区桜丘町15番6外 『桜丘町14-6』 (黒松ビル)3,450,00032.7 (10.6)
6菊陽5-1 熊本県菊池郡菊陽町大字津久礼字石坂2343番2 (富永ビル)125,00030.9 (30.8)
7台東5-4 東京都台東区浅草1丁目16番14外 『浅草1-1-2』 (ASAKUSA SQUARE)7,170,00029.0 (16.8)
8高山5-1 岐阜県高山市上三之町51番 (脇茶屋)425,00028.8 (18.3)
9台東5-5 東京都台東区西浅草2丁目66番2『西浅草2-13-10』 (藏田フラッツ西浅)2,580,00025.9 (17.8)
10渋谷5-9東京都渋谷区神山町7番9『神山町16-4』  (堀内ビル)1,840,000 24.3 (11.3)
(注)『 』書きは住居表示、( )書きはビル名または店舗名。
上段の変動率は2025年地価公示、下段は2024年地価公示。
(出典:国土交通省「令和7年地価公示の概要」

住宅地の上位を占めているのは、北海道富良野市や長野県白馬村、沖縄県宮古島や石垣島など、リゾート地として人気が高く、インバウンド需要も拡大しているエリアです。日本政府観光局によれば、2023年から2024年にかけての訪日外客数の伸び率は47.1%(暫定値)。過去最高だったコロナ禍前の2019年の数も、15.6%上回っています。

一方、住宅地、商業地ともに上位にランクインしている北海道千歳市は、大手半導体メーカー「ラピダス」が進出しているエリアです。半導体という世界的に需要が高い産業の進出によって雇用が創出され、それに伴って商業や住宅の需要も拡大します。商業地の上昇率6位に着けた熊本県の菊陽町も、台湾の半導体メーカー「TSMC」が進出しているエリアです。

訪日外客数 月別推移(2017年〜2024年)
(出典:日本政府観光局「訪日外客数(2024 年 12 月および年間推計値)」)

首都圏は都心近郊や再開発エリアの上昇率の高さが目立つ

首都圏,公示地価

東京都

平均変動率

全用途住宅地商業地
23区9.6
(6.0)
7.9
(5.4)
11.8
(7.0)
多摩地区3.8
(3.0)
3.4
(2.7)
5.3
(3.8)
(単位:%)※かっこ書きは2024年の変動率
(出典:東京都 「令和7年地価公示価格(東京都分)の概要」)

2025年の上昇率は、23区、多摩地区ともに大幅に拡大しました。住宅地の変動率トップは、全国の変動率ランキングにもランクインした目黒区青葉台の地点です。目黒区青葉台は渋谷駅に近く、ハイエンドクラスのマンションが多く分譲されているエリアです。マンション需要の拡大が地価を引き上げているものと推測されます。

一方、商業地のトップは、こちらも全国ランキングにもランクインした渋谷区桜丘町の地点です。2024年7月に全面開業を迎えた「渋谷サクラステージ」に至近で、渋谷の再開発が地価上昇に大きく寄与したものと予想されます。

その他、台東区浅草や中野区など、インバウンド需要が旺盛なエリアや再開発計画が進むエリアが変動率上位にランクインしています。

「令和6年地価公示価格(東京都分)の概要
令和7年地価公示価格(東京都分)の概要
(出典:東京都 「令和6年地価公示価格(東京都分)の概要」「令和7年地価公示価格(東京都分)の概要」

上記のマップは、左が2024年、右が2025年の平均変動率を表しています。平均変動率が7.0%を超える赤いエリアが、都心5区、6区のみならず、大田区や杉並区、調布市などまで拡大していることがわかります。

神奈川県


全用途住宅地商業地
神奈川県全域4.1 (3.4)3.4 (2.8)6.6 (5.4)
横浜市4.3 (3.6)3.2 (2.7)7.2 (6.0)
川崎市5.4 (4.2)4.4 (3.2)8.5 (7.1)
相模原市4.8 (4.4)4.3 (4.0)6.6 (5.7)
その他市
3.2 (2.6)5.3 (4.0)
(単位:%)※かっこ書きは2024年の変動率
(出典:神奈川県 「地価公示の概要(令和7年地価公示)」)

神奈川県全域の全用途の平均変動率は、前年を上回りました。横浜市・川崎市・相模原市も、上昇率は拡大しています。

住宅地の変動率トップは、横浜市泉区の相鉄いずみ野線「ゆめが丘」駅周辺の地点です。ゆめが丘駅前では、2023年に相鉄線と東急線の直通運転が開業したことを受け、再開発が進められています。2024年7月には、駅直結の商業施設「ゆめが丘ソラトス」が開業し、周辺では大規模な新築マンションの開発も進んでいます。その他、変動率の上位には、藤沢や鎌倉、茅ヶ崎などのリゾート地も目立ちます。

千葉県


全用途住宅地商業地
千葉県全域5.0 (4.7)4.5 (4.3)5.7 (5.3)
東京圏4.9 (4.7)7.0 (6.4)
地方圏▲0.2 (▲0.3)▲0.2 (▲0.3)
(単位:%)※かっこ書きは2024年の変動率
(出典:千葉県 「令和7年地価公示に基づく地価動向について《千葉県》」)

千葉県の全用途平均変動率は5.0%と神奈川県を上回っていますが、東京圏と地方圏には大きな差があるようです。

市区町村別の変動率は13.1%の流山市がトップで、8%台の浦安市、千葉市美浜区と続きます。住宅地の上昇率が高かった地点も、1位から10位まで流山市が独占しています。流山市は、東京都に近接していることに加え、2005年につくばエクスプレスが開業して以降、交通利便性も飛躍的に高まっています。

埼玉県


全用途住宅地商業地
埼玉県全域2.0 (2.0)2.8 (2.4)
さいたま市3.1 (3.1)2.5 (2.7)4.8 (4.4)
川口市5.3 (5.3)5.1 (5.3)6.6 (4.9)
蕨市6.1 (6.0)6.1 (6.0)6.1 (6.2)
戸田市6.4 (6.0)6.2 (5.9)7.5 (6.8)
(単位:%)※かっこ書きは2024年の変動率
(出典:埼玉県「令和6年地価公示のあらまし」 「令和7年地価公示のあらまし」)

埼玉県全域の上昇幅は、首都圏の他の都道府県と比較すると小さいようです。県内で上昇幅が高いのは、千葉県と同様、東京に近いエリアで、住宅地の変動率上位はさいたま市と川口市がほぼ独占しています。とくに、再開発が進むさいたま市浦和区や大宮区の多くの地点が、上昇率上位にランクインしています。

その他主要都市の住宅地 平均変動率

平均変動率
大阪府全域2.3 (1.6)
大阪市5.8 (3.7)
愛知県全域2.3 (2.8)
名古屋市3.6 (4.5)
北海道全域1.4 (4.4)
札幌市2.9 (8.4)
宮城県全域4.2 (4.7)
仙台市6.3 (7.0)
福岡県全域4.9 (5.2)
福岡市8.0 (9.6)
(単位:%)※かっこ書きは2024年の変動率
(出典:国土交通省「令和7年地価公示の概要」)

主要都市の変動率を見ると、いずれも前年比プラスとなっていますが、多くのエリアは2024年より上昇幅が縮小しているようです。また、上表にはありませんが、栃木県や群馬県、新潟県、和歌山県など決して少なくない都道府県が長らく地価を落とし続けています。

コロナ禍以降は地方都市の地価の大幅な上昇も目立ちましたが、2025年は東京23区や大阪市など都心部が地価の上昇を牽引しています。日本ではそこまでテレワークが普及せず、近年は都心部のオフィス空室率も着実に低下しています。都心回帰が進むなか、国内外の投資需要も都心部に向いていることも都心部の地価上昇に大きく寄与しているものと考えられます。

まとめ

2024年に日本銀行がマイナス金利政策を解除し、日本でもいよいよ物価上昇、金利上昇が本格化していく見通しです。2025年の公示地価はバブル後最大の上昇率を見せましたが、国内の実需だけでなく海外マネーも流れ込む都心部、インバウンド需要が高いリゾート地、再開発エリア、半導体メーカーが進出するエリアなど上昇地点は限定的です。人口が減り、空き家が増え続けていくと考えられる今後は、ますます地域間格差が大きくなっていくものと推測されます。

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