中古マンション,建て替え,狙い
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中古マンションは建て替え狙いで購入すべき?確認ポイントは3つ

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • 建て替えの現状を踏まえると、運よく建て替え予定のマンションを狙えるケースはほとんどない
  • 仮に建て替えが実現すれば、築古マンションが新築マンションになるため、資産価値が大幅に向上する

住宅購入を検討していて、「建て替え狙いで中古マンションを購入すればお得なのでは?」と考えている方もいるようです。

確かに、運よく建て替え直前のマンションを購入できれば、理論的には得する可能性があります。

しかしながら、現状を踏まえると、狙って建て替え前のマンションを購入することは極めて難しいです。

曖昧な可能性を期待して住みにくい築古マンションを選ぶよりも、住みやすい築浅マンションを選択した方が快適に暮らすことができて得かもしれません。
この記事では、「建て替えの中古マンション狙い」をテーマに解説します。

中古マンション建て替えの現状

中古マンション建て替えの現状

建て替え予定の中古マンションを狙うのであれば、建て替えの現状を知ることが重要です。

国土交通省によると、2024年4月1日時点までに建て替えが行われたマンションの戸数は、過去からの累計で約2.4万戸(297件)です。

一方で、現存するマンションのうち建て替えが検討されることの多い築40年以上の戸数は2024年4月1日時点で約136.9万戸となっています。

現存する約136.9万戸のうち、建て替えられたマンションは累計で約2.4万戸と想定すると、建て替えの実績はわずか約1.7%にしか過ぎません。

このような現状を踏まえると、仮に築古マンションを購入しても、運よく建て替え予定のマンションに遭遇できるケースはほとんどないといえます。

マンションの建て替えが進まないのは、端的にいうと住民の合意(建て替え決議)を得ることが難しいからです。

建て替え決議とは、区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成を必要とする決議のことを指します。

老朽化しているマンションは、区分所有者である住民も高齢化していることが多く、資金がない等の理由で建て替えの合意に至らないことがほとんどです。

国も現状を踏まえ、マンションの建て替えをスムーズに行う目的でマンション建替円滑化法を作ったものの、十分な機能を果たしてはいません。

2024年までに行われた297件の建て替え実績のうち、マンション建替円滑化法を利用した建て替えは126件(約42%)、利用しない建て替えは171件(約58%)です。

マンション建替円滑化法を利用した建て替え実績は徐々に積み上がっているものの、利用数はまだ過半数未満であり、建て替えが劇的に円滑になったとはいえない状況です。

マンション建替円滑化法ができる前よりは建て替えのハードルは若干和らいだものの、マンションの建て替えは未だに極めて困難であると認識しておく必要があります。

出典:マンション建替え等の実施状況|国土交通省
築40年以上のマンションストック数の推移|国土交通省

建て替え予定のある中古マンションを狙うメリット3つ

建て替え予定のある中古マンションを狙うメリット

運よく建て替え予定のマンションに巡り合うことができれば、メリットは存在します。
この章では、建て替え予定のある中古マンションを狙うメリットについて解説します。

1.資産価値が大幅に向上する

仮に建て替えが実現すれば、築古マンションが新築マンションになるため、資産価値が大幅に向上する点がメリットとなります。

建て替えには既存の区分所有者も一定の費用を負担しますが、新たに新築物件を購入するよりは安く済むことは多いです。

理論的には築古物件を安く購入し、ある程度の費用を負担すれば新築物件を手に入れることができます。

2.耐用年数がリセットされる

建て替えによって新築物件になれば、耐用年数がリセットされる点がメリットです。
鉄筋コンクリート造の建物も、塩害や中性化等によって経年とともに劣化していきます。
内部の鉄筋が腐食し始めると、強度が低下するリスクがあります。

建て替えが行われれば、建物が新しい建材によって堅牢な状態に生まれ変わるため、安心して長く暮らせるようになります。

3.住みやすくなる

建て替えが実現されれば、住みやすくなる点もメリットです。

設備は最新のものに生まれ変わりますし、これまでなかったエレベーターやオートロックが付くこともあるなど居住性や防犯性も大きく向上します。

建て替え予定の中古マンションを狙うデメリット4つ

建て替え予定の中古マンションを狙うデメリット

建て替え予定のマンションを狙うなら、デメリットをしっかり理解しておくことが大切です。
この章では、建て替え予定の中古マンションを狙うデメリットについて解説します。

1.建て替えまでの維持費が高い

建て替えを予定しているマンションは、築年数が相当に古いことが多いため、維持費が高い点がデメリットです。
一般的に修繕積立金は高くなっており、また古い物件は断熱性も低いことから電気代もかさみます。

建て替えまでの期間が長期化すれば、維持費の負担は余計に重くなっていきます。

2.仮住まいが必要になる

建て替えが実現されると、仮住まいが必要となる点がデメリットです。
退去して戻ってくる際の2回分の引っ越し費用と、仮住まい期間中の家賃等が必要です。

3.希望の部屋に入れないことがある

建て替え後のマンションには、希望の部屋に入れないこともあります。

建て替えは余剰で生み出される部屋を分譲して建て替え費用を賄いますが、新たに売り出す部屋は高く売るために条件の良い部屋が選ばれることが多いです。

また、建て替え後の建築プランによっては、建物の形状が大きく変わり、日当たりなどの住環境が以前と異なる場合があります。全戸南向きだった団地が西向きや東向きのあるマンションになってしまい希望する方位の部屋を選べないことも考えられます。

そのため、既存の住民も良い部屋に住めないことがあります。

4.建て替え計画が進むとは限らない

建て替えの計画があったとしても必ずしも建て替えるとは限りません。

建て替え計画は、実行されるまでに時間が長くかかり、しかも中止もあり得る点がデメリットです。

近年は建築費が高騰していることから、計画が長引いて当初の予算では建て替えを実行できなくなることもありえます。

また、実際に建て替え決議を行った結果、合意に必要な5分の4以上の賛成を得られずに建て替えに至らなかった事例もあります。

・「中古マンションの建て替え費用」に関する記事はこちら
中古マンションの建て替え費用を軽減できる制度とは?建て替えまでの流れも紹介

中古マンションの建て替えの流れ

中古マンションの建て替えの流れ

マンションの建て替えには何年も要します。
建て替えの一般的な流れは、以下の通りです。

  1. 建て替えの検討
  2. 施工会社とプラン作成
  3. 住民の賛成決議
  4. 建て替え組合の結成
  5. 着工

マンションの建て替えでは、理事を中心に事前に勉強会が行われることが多いです。

指南役としてデベロッパーやゼネコンが参画し、建て替え手法や予算、スケジュール等が検討されます。
予算を立てるには設計プランが必要であるため、早い段階から施工会社等とプランを作成することが通常です。

勉強会の段階で建て替えが非現実的であると明らかになることも多く、建て替え決議を図るに至らないこともよくあります。
仮に建て替え決議を図ったとしても、区分所有者等から5分の4以上の賛成を得られないことも多いです。

一方で、建て替え決議が得られれば、その後はスムーズに話が進みます。
建て替え組合が結成され、建て替え後元の住民の権利をどのように配分するかの権利変換計画も策定されていきます。

権利変換計画が利害関係者に承認されれば、住民に仮住まいへ移転してもらい、建物を解体し、新築工事の着工が行われるという流れです。

建て替え予定の中古マンションを狙うなら確かめるべき3つのポイント

建て替え予定の中古マンションを狙うなら確かめるべきポイント

建て替え予定の中古マンションを狙うなら、購入前に確かめておきたいポイントがあります。

この章では、特に重要なポイントについて解説します。

1.管理組合が機能しているか

建て替えができるマンションは、管理組合が健全に機能していることが当然の条件です。
築古マンションの中には、空き家の増加や住民の高齢化等により管理組合が機能不全に陥っている物件も存在します。

建て替えに限らず、健全に機能している管理組合が存在しているかどうかは中古マンションを購入するにあたり必須の条件です。

築年数が相当に古いマンションを購入する際は、管理組合の機能状況を確認することが適切となります。

・「マンションの管理組合」に関する記事はこちら
マンションの管理組合とは?理事長や役員、理事会や総会の役割を解説

2.建て替え計画がどこまで進んでいるか

建て替え計画がどこまで進んでいるか、確認することも重要です。
建て替え決議を経ているマンションを購入できれば理想ですが、現実的に建て替え決議を経たマンションに出会うことは難しいといえます。

現実的には建て替え計画が相当に煮詰まっている物件を購入することになりますが、煮詰まっているかどうかはあくまでも主観的な判断要素です。

仲介に入っている不動産会社も確約できないことは断言しないため、最終的には自己判断で購入するしかありません。

建て替え計画がどこまで進んでいるかを判断する際には、売主から理事会の記録を入手し、建て替えに関する議論がどのように展開されているかを確認しましょう。

3.資金がどの程度かかりそうか

建て替えの確度がかなり高い物件は、理事会の議事録に区分所有者が負担する建て替え費用に関して記載されている可能性があります。

また、建て替えが現実的な物件は、売主も費用を知っている可能性があるため、売主にも確認することが適切です。

ただし、施工会社と請負工事契約を締結していない以上、予算は確定ではありません。

近年の建築費の高騰を踏まえると、請負工事契約時には予算を大きく上回っている可能性もあり、金額が増える懸念があることも意識しておきましょう。

まとめ

以上、建て替えの中古マンション狙いをテーマに解説してきました。
中古マンションの建て替えは、ほとんど行われていないのが実態です。
狙って建て替え前の中古マンションを購入すること自体、極めて難しいといえます。
運よく建て替えマンションを購入できれば一定のメリットはありますが、それでも仮住まいが必要になる等のデメリットは存在します。

建て替えマンションを狙うのであれば、建て替え計画がどこまで進んでいるかをしっかり確認することが重要です。
仮に購入できたとしても、住みやすいとは限らないため、慎重に判断していただければと思います。

・「中古マンションの築年数ごとの特徴」に関する記事はこちら
中古マンションを買うなら築何年がいい?築年数ごとの特徴を紹介

この記事のポイント

建て替え予定の中古マンションを購入することは可能?

不可能ではありませんが、仮に築古マンションを購入しても、運よく建て替え予定のマンションに遭遇できるケースはほとんどないといえます。
中古マンションの建て替えが実現するケースはまだまだ少ないのが現状であるためです。

詳しくは「中古マンション建て替えの現状」をご覧ください。

建て替え予定の中古マンションを狙うデメリットは?

建て替えを予定しているマンションは、築年数が相当に古いことが多いため、維持費が高い点がデメリットです。
一般的に修繕積立金は高くなっており、また古い物件は断熱性も低いことから電気代もかさみます。
建て替えまでの期間が長期化すれば、維持費の負担は余計に重くなっていきます。

詳しくは「建て替え予定の中古マンションを狙うデメリット4つ」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

現状では築50年を超える物件であっても建て替えられない物件が多いのが実態です。曖昧な期待の中で購入して建て替えが行われなかった場合、住みにくいマンションに暮らし続けることになります。築古マンションの中には、各室にエアコンを設置できない物件も多いです。温暖化が進行している中、不用意に築古物件を選ぶことはハイリスクといえます。マンションを買えば少なくとも何年かは住むことになるため、安易に建て替え狙いで物件を選ぶのではなく、立地や住宅性能を加味したうえで住みやすい物件を選択することをおすすめします。

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